2016年5月29日日曜日

~説教~「対人関係革命」


「対人関係革命」    

ルカ 6:27-36 2016.5.29



「敵を愛し、あなたがたを憎む者に親切にしなさい。」この敵を愛する教えは、ある面では、革命的な教えです。根本的な大転換です。この革命思想は中国からやってきた政治思想ですが、皇帝が天の神の心を受けて善政を行わなければ、その政権は転覆されて新しくされなければならないという考えです。先日、教会では聖霊降臨祭を祝いましが、これは価値観の大転換であり、宗教上の大革命とも言えるでしょう。聖霊によって新しくされた弟子たちはその後数百年続いたキリスト教迫害にも耐えることができました。聖霊なくしては、敵を愛するどころか、友人や家族のちょっとした言葉でさえ赦せないことがあるかもしれません。

南アフリカの人種差別の歴史を見ますと、「敵を愛し、あなたがたを憎む者に親切にしなさい」ということが現実の問題であったことが分かります。後に大統領になったネルソン・マンデラは反差別の運動のために27年間刑務所に入れられていましたが、その困難な体験を通して、彼は憎しみの連鎖を終わらせる働きをしました。これは一種の無血革命です。しかし、実際に敵対関係に置かれたときの、わたしたちの許容度は低いものです。ただ、こうした困難なことを通して、わたしたちが聖霊を求めるように神は導いておられるのです。

イエス様は、一般的な意味で敵を愛せとは書いてありません。ギリシア語原文では「あなたの」敵を愛しなさいとあります。それに、ギリシア語での「敵」(エクスロス)とは、あなたの心を騒がせる者の意味です。この「あなたの心を騒がせる者」は身近にいるのではないでしょうか。教会にもいるでしょう。この「心を騒がせる者」を愛しなさいとイエス様は命じられているのです。人間には対人関係に革命を起こすことはできません。ただ、聖霊の助けによって可能なのです。聖霊の働きの中にわたしたちは愛する者として新生し、生まれ変わるのです。

聖書では、神がこの愛を完成させるとあり、この言葉の語源はテロスであり、終末とか物事の完成を示す言葉です。DNAの先端がテロメアと呼ばれているのもこのためです。ここで分かるように、終末とは終わりではなく、完成の時なのです。ですから、聖霊降臨が起こったことは、弟子たちに終末の時のテロスが来たことであり、神の働きが完成したことなのです。この礼拝において、「汝の敵を愛せよ」という言葉を聞き、それをわたしたちが心から信じるときに、それも完成であり、イエス様が説教されたように、「この聖書の言葉は、今日、あなた方が耳にしたとき、実現した」(ルカ4:21)ということが必ずおこるのです。



説教:中川 俊介 牧師